強引社長といきなり政略結婚!?
「いえ、そういうわけには――」
「ほら行くぞ」
今度は私の腰を引き寄せる。
「日下部、すぐに戻るから。それまで頼んだぞ」
そう言いながら、朝比奈さんは私を引き連れて強引に歩き出した。
最後にチラッと見た日下部さんの目は、私が震えあがるほど冷たいものだった。
「自転車は?」
こうなったらもう送ってもらうしか私に道はないだろう。諦めて、停めてある自転車を指差した。
そこへ私と一緒に向かうと、朝比奈さんが長い足でスタンドを蹴る。右手は私の腰を引き寄せたまま、左手で器用にハンドルを操作し歩き出した。私に逃げられると思っているからだろう。
「車は地下に停めてある」
このビルの下は駐車場になっているらしい。
右端にある入口から坂を下っていく。
左手に折れ、一番奥に停められた車の前で朝比奈さんが立ち止まる。