強引社長といきなり政略結婚!?
「ほんと、いい顔だ」
「やめてくださいよ。そういう朝比奈さんだって、全然違います」
普段の彼が生気を失っているわけではないけれど、生き生きとした目には歴然とした差がある。
「そう? カッコイイ? 惚れ直しちゃう?」
朝比奈さんがおどけて笑う。
「直しません」
まだその手前だ。
笑いながらきっぱり返すと、彼はしゅんと眉尻を下げた。
くるくると表情のよく変わる人だ。見ていて飽きない。
「汐里、ちょっとこっち」
彼においでと手招きをされる。
互いに馬で歩み寄ると、朝比奈さんの手が私へ伸びてきた。
反射的に体を硬くしていると、「じっとしてて」と彼が私の頭のてっぺんに軽く触れる。
なんだろうかと言われるまま動かずにいると、彼は指先で綿毛を摘まんでいた。