強引社長といきなり政略結婚!?
手綱を握っていた手や肩から、力が一気に抜ける。
「……たんぽぽ?」
「もう咲いてるんだな」
まだ二月なのに。
朝比奈さんがそっと指先を開くと、綿毛は風に乗って飛んでいった。
「隙あり!」
不意に唇が触れ合う。
馬に乗ったまま、器用にも彼が私にキスをした。
まさかの行動に茫然としてしまって、身動きひとつできない。
数秒後に私から離れた朝比奈さんは、いたずらっこのように笑っていた。
鼓動がトクンと弾む。それが不可解な動きだったものだから、すぐに強気な反応ができなかった。
「……汐里?」
朝比奈さんも拍子抜けだったのか、首を傾げて私を見ていた。
「……あ、も、もう! なんなんですか!」
ようやくそう返す。