オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「じゃあ、気をつけて帰れよ。後で会社でな」

駅に着くと、久我くんはそう言って反対のホームへと向かった。私も、彼の背中に「うん」と返した後、ちょうど到着した電車に乗った。


この時間帯なので、さすがに電車に乗っている人は少ない。
ゆったりとシートに腰掛けて、ぼんやりと外の景色を眺めながら、さっきの久我くんの言葉を思い返していた。


……まさか久我くんが私のことを……。


今までは、私と付き合いたいとは思っていなかったって言ってた。それは、私がずいぶん前から『久我くんは気の合う友だち!』って断言していたからだよね。でも、三年間もそうやって私の幸せを純粋に願ってくれていたなんて……。

久我くんのこと、まるっきり恋愛対象外ってわけじゃないんだよ。私、真面目で仕事ができる男性が好みのタイプだから、久我くんは思いっ切り当てはまってる。しかも顔までカッコいいし。

だけど、今まで年上の大人な男性に惹かれてばっかりだったから、同い年の男の子と付き合ったことはないんだよね。だから久我くんのことも、本当は彼女がいないって最初からわかっていたとしても、そういうふうには見なかったんだろうな。


……でも、さっきの熱情的な瞳が、言葉が、忘れられない。胸の奥に刺さったみたいにいつまでも鮮明に残って、頭から離れない。


返事、しなきゃだよね。急かされてはいないけど。


わ、私はどうしたらいいんだろう!?
< 21 / 102 >

この作品をシェア

pagetop