オフィスに彼氏が二人います⁉︎
その後、ひとり暮らしのアパートに帰った私は、シャワーを浴びて着替えをし、メイクをして朝食を食べる。
朝食を作る時間はなくて買い置きしていたパンとインスタントのスープにしたけど、コーヒーを一杯飲むくらいの時間の余裕はあった。

いつも通りの時間に出社し、普段通りに振る舞う。

日中は久我くんは外回りに出ているし、営業室にいるときもテラーの私と会話する用事はあまりない。仕事も程良く忙しくて、いい意味で久我くんの告白を意識しすぎずに済んだ。



その後お昼休憩の時間となり、私は営業室に置いてあったランチ包みを片手に、食堂に向かった。


何人かで乗り合わせたエレベーターが食堂のある七階に到着し、私は一番最後に降りた。

すると、聞き覚えのある声に「嵩元さん」と呼び掛けられ、ドキン、と私の全身に緊張が走る。


振り返ると、そこにはにこやかなほほえみを向けてくれている時山部長の姿があった。


「奇遇だね。これからお昼?」

「は、はい。食堂で」

「そうなんだ。俺はこれから外出なんだ。……ところで」


一度、辺りを見渡して周りの人が誰もこちらを気にしていないのを確認してから、時山部長は私にそっと顔を近付け、



「食事の件、今週の金曜日はどう?」


と、コソッと耳打ちしてきた――。


誰もが憧れるイケメン部長に、この距離でそんなことを言われ、私の顔は思わず、嫌でも熱さを帯びる。


……でも。


「……ごめんなさい」
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