オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「え、あ、はい、そうですけど……」

久我くんも、まさか話し掛けられるとは思っていなかったのだろう、二重の大きな瞳を見開いたまま、時山部長を凝視しながら答える。


時山部長は、なんでもないような様子で、相変わらずにこにことしていて、言葉を続ける。


「久我くん、今週の金曜日って空いてるかな? 俺と、嵩元さんと、三人で食事に行かない?」


はっ?という、私と久我くんの声が重なる。


「ダメかな? なにか用事ある? あ、嵩元さんは、俺と二人きりじゃなければOKなんだよね?」

「あ、えと……まあ……」

私が曖昧にそう返事すると、久我くんも「俺も別にいいですけど……」と答える。


「じゃあ、今週の金曜日。店は予約しておくよ。詳しいことはまた」


そう言うと時山部長は、にこやかな笑顔のまま、その場を去っていった。



「……あのさぁ」

時山部長の姿が見えなくなったのを確認してから、久我くんが溜め息混じりに言葉を発する。


「な、なに?」

「なにじゃねーよ。あのさ、時山部長がお前に好意ある……っていうのは、お前の勘違いなんじゃね?」

「う……」

確かに、私もそう感じる。
この間時山部長と話した時、『俺にもチャンスがある』みたいなこと言われたから、私に好意があるのかな……って思ってたけど、もしかしたらあれは聞き間違いだったのかも。
時山部長からしたら、部下の一人を食事に誘うというその行動は、文字通りのことでしかなかったのかもしれない。
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