オフィスに彼氏が二人います⁉︎
時山部長に連れて来られたのは、駅から歩いてすぐのところにあるーー超高層ビル。
会社の近くだから、私も当然知っている場所ではあるけど、入ったことはない。
というか、私のような庶民が易々と入れるようなビルではない……。


「ここのレストラン来たことある? 仕事終わりだし、会社から近い場所の方がいいかと思ってここを予約したんだけど、違う場所の方が良かったかな?」

「へっ⁉︎ いえ、来たことなんて一度もないです! こ、来られてうれしいです! た、ただ私、あまり持ち合わせが……!」

「ハハッ。おもしろいこと言うね、嵩元さん。俺から誘ったのに支払いさせるわけないでしょ?」

時山部長はそう言ってスタスタとビルの中へと入っていく。


うーん、やっぱりスマート。
ほんとにいいのかな?と思いながら、私はとりあえず時山部長の後ろをついていく。



エレベーターでビルの八階に到着すると、入り口で女性のウェイターに「いらっしゃいませ」と頭を下げる。
時山部長が自分の名前を告げると、そのまま窓際のとても眺めの良い三人席に案内された。


「二十時になれば、ライトアップが増えてもっと夜景が綺麗だよ」

「そ、そうなんですか」

今まで付き合ってきた男性とも、こういう夜景が素敵なレストランに来たことはあった。
でも、恋人じゃない人とは初めて。
時山部長、私に好意があるわけじゃないのなら、なんでわざわざこんな素敵な場所を選んだの?
それとも、本当の本当はやっぱり私のこと……?
いやー、ないな。なんらかのミラクルで私のこと好きになってくれたのだとしても、だとしたら久我くんは誘わないわ。
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