オフィスに彼氏が二人います⁉︎
広い車。
車のことには詳しくないけど、一般よりランクが上の車であることは一目瞭然だった。


「あの、どこへ向かっているんですか?」

国道を走る車の中で、おず、と質問をぶつけてみた。
今日までの間にこの質問は既に何回かしていたけど、答えてはもらえなかった。
案の定、

「着いてからのお楽しみ、かな」

と言われてしまった。まあ、時山部長にとんでもないところに連れていかれることはまずないから、別にいいか。

気付いたら車は高速道路に入っていた。


そこから走り続けて、約三十分後。

「あ。あのビル……」

車から見える、最近できたばかりの高層ビル。
オフィスやホテルやショッピングモールが集まる複合施設だ。
高さは約三百メートルだっけ……テレビで見たことしかないから詳しくないけど。


「ここの展望台からの眺めを見たら喜んでもらえるかなと思って。嵩元さん、この間の食事の時に夜景をすごく喜んでくれていたから、眺めの良いところが好きなのかなと思って」

この間の食事。それは、久我くんと三人で付き合うことになった、あの日のことだ。
そういえば、三人で付き合うという話になった後、時山部長はそれ以上多くは話さず、余裕そうな表情を浮かべてディナーを堪能していた。そして、久我くんはそんな時山部長を複雑そうな顔をして見つめるのみで、彼もまたあまり言葉を発しなかった。
そのため、妙な沈黙が流れてしまい、私は気まずさを打開しようと『夜景すごいですね! ね、すごい!』と、必死に喋っていたのを思い出した。
< 42 / 102 >

この作品をシェア

pagetop