オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「本当、素敵」

さっきと同じ言葉をまた呟いてしまう。呟かずにはいられないくらい、素敵な光景。夜空に宝石を散りばめたみたいだ。


食事をしながら、会話も楽しんだ。
共通の話題はあまりないから仕事の話が主だったけど、勉強になる話をたくさん聞けた。


そして、最後に……。



「この後もずっと一緒に過ごしたい。朝まで」

「えっ!?」

「……なんてね。まあ本音だけど。でも、久我くんとの約束を破ることになるから、今夜は諦めるよ」

そう言って時山部長は、テーブルに置いていた私の右手をそっと握る。

さっき、ちょっと触れられただけでもドキドキしてしまったのに、今はしっかりと握られていて……全身で緊張してしまう。


「……久我くんとの約束って、具体的にどんなものなんですか?」

照れ隠し、というわけではないけれど、何か言葉を発しないとますます恥ずかしくなる気がして、そんなことを尋ねてみた。

すると時山部長は、彼と久我くんの間に交わされた”ルール”について説明してくれる。


「まず、二人きりの時にキスはしない。抱き締めるのも禁止。必要以上に触れない」

「そ、そうなんですね……」

「あと、当然セックスもしない」

「セッ……!?」

紳士という言葉がピッタリの時山部長の口から、まさかセックスなんて言葉が出てくるとは思わず、私はつい固まってしまう。

だけど、時山部長はそれを特に気にする様子はなく。


「君のことが好きだから、キスもしたいし、抱き締めたい。……一つになりたい。
だけど、この関係を提案したのは俺だ。その俺が、君と付き合っていくためのルールを破るわけにはいかない」

真剣な表情で、私にそう言うのだった。
< 46 / 102 >

この作品をシェア

pagetop