オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「あり、がとうございます。なんだか照れちゃいますが……」

恥ずかしくて時山部長と目が合わせられなくて、私は俯きながらそう答えた。


すると、彼が私の手を握る手にギュッと力が込められる。

そして、彼はまっすぐに私を見つめて。


「好きだよ、七香ちゃん。世界中の誰よりも。きっと、俺を選んでくれるって信じてる」


吸い込まれそうなほどに真剣に私を捉える、彼の切れ長の瞳。
少し掠れた、いつもより低く、いつもより真剣みを帯びたその声からは、初めて下の名前を呼ばれた。


……ドキドキした。

単に大人の男性だから、とか憧れてる人だから、ってわけじゃない。

きっと、時山さんだから。

私は、彼自身にときめいてしまったのだと思う。


だけど……。



「あり、がとうございます」

曖昧な返事しか返せないのは、なぜ?


時山部長は、今日急いで私の返事を聞こうとは全く思っていなかったようで、その後すぐに手を離し、「もう遅いし、帰ろうか」と言ってきた。


眩い夜景を背にし、私と時山部長はレストランを後にした。
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