オフィスに彼氏が二人います⁉︎
翌週の月曜日。

私はいつも通り仕事をしていた。


途中、本部の役席に持っていかなければならない資料ができたので、それを持ってエントランスにあるエレベーターの方へ向かった。

普段私が働いているのは一階の営業店で、同じ建物の五階から上階に本部室がある。


エレベーターを待っていると、後ろから「嵩元さん」と誰かに声を掛けられる。

振り返ると、そこにいたのは審査部の時山(ときやま)部長だった。


「おっ、お疲れ様です!」

思わず姿勢をピンと正して、声が上擦りそうになるのを抑えた。


時山 昴(すばる)審査部長。
三十五歳という若さで審査部長に大抜擢された、正真正銘のエリート。

融資業務のことなら時山審査部長に聞けばなにも間違いがない、と頭取にまで断言させたという噂の持ち主。
噂が本当かどうかまではわからないけれど、おそらく事実なのだろう。そのくらい、時山部長の仕事ぶりに関しては良い噂や素晴らしい実績しか耳にしない。

でも、彼の本当にすごいなと思うところは、仕事以外でも良い評判しか聞かないところだ。部下の指導も的確で、誰からも慕われている。女性社員との付き合いも上手く、誰にでも優しいのに、妙な噂はなにも出てこない。仕事もプライベートも、きっとすごく真面目で誠実な人なのだろう。

長身だし、ルックスも最高。綺麗にストレートの黒髪はいつでもサラサラで、切れ長の瞳、スッとした鼻筋。
久我くんは”甘い顔立ち”って表現がピッタリのイケメンだけど、時山部長は”大人な美形”って感じ。

そんなにハイスペックな時山部長だけれど、結婚はしていないし彼女もいないとのこと。そうなれば、部長に憧れている女性社員はたくさんいる。
私もその一人。と言っても、私の場合は”憧れている”だけで、”狙っている”とかではないのだけれど。男運の悪い私が、時山部長のような素敵すぎる人に相手してもらえるわけがないし。
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