オフィスに彼氏が二人います⁉︎
時山部長はスッと私の隣に立つと、ニコッと微笑みながら私に視線を向ける。
やっぱり、すごく美形……。しかも好みの顔なんだよねぇ……。思わずうっとりして、ドキドキしてしまう。


「あ、あの、時山部長……? 私の顔になにかついていますか……?」

「ん? いや、久しぶりに嵩元さんの顔見れたなと思って」

視線を向けられていることへの疑問の答えがまさかのそれで。深い意味なんてなにもないのはわかっているのに、思わず心の中で「キャーッ!」と叫んでしまう。


「先週、何度か営業店に足を運んだ時があったんだけど、嵩元さんの姿が見当たらなかったから」

「あ、先週はお休みをいただいていたので……」

「休み? 旅行とか?」

「い、いえ……」

彼氏にフラれたショックで胃腸炎になっていました、とは言えず、私は「体調不良で……」とだけ答えた。


すると時山部長は。

「体調不良? 今はもう大丈夫なの?」

妙に真剣な表情でそう尋ねてくれる。
誰もが憧れるスーパーハイスペック上司にそんなふうに心配され、私は「大丈夫です」と答えながら、つい照れてしまう。


「本当に? そういえば、顔が赤いように見える」

「えっ? いやこれは――」

あなたに照れているからです、とはもちろん言えるはずはなかったのだけれど、私の言葉を遮るように、突然、部長が大きな右手を私のおでこに充ててきた。
< 8 / 102 >

この作品をシェア

pagetop