オフィスに彼氏が二人います⁉︎
何をどう伝えればいいんだろう。


良い結果を望んでるわけじゃない。こんな私をずっと想い続けてくれた久我くんに、今の自分の気持ちを正直に伝えたいだけ。……私が悲しい想いをさせてしまった時山部長のためにも。


それなのに、いざ久我くんを目の前にすると〝あわよくば〟っていう感情が出てきてしまう。私、最低だな……。




「好、き」


この状況での正しい言葉の選択がわからず、思わず飛び出た本音。私も、彼と目が合わせられず、顔を背けた。



正直、少し期待していたけど、「……俺はもう好きじゃない」と告げられ、心臓が凍りついた気分になった。


……もしかしたら、久我くんの言葉は本当は全て本当なのかもしれない。私のために嘘を吐いている、なんて私の自分勝手な思い込みなのかもしれない。




「……じゃあ、俺もう行くから」

私に背を向けて、久我くんは歩きだす。


段々遠くなっていく彼の背中を見て、涙が滲む。


ここで諦めたら、もう一生会話することないんじゃないかなって感じた。

そう思うのに、彼に近付くのが怖くて、足がすくんで動かない。




……だけど、やっぱり。




「久我くんっ」

追いかけて、後ろから彼の手を掴んで引き止めた。


彼がゆっくりと振り返る。

一瞬だけ、微かに目が合った。それだけでも、すごくうれしいと感じてしまった。


「わ、私……」

何を言っても、きっともう状況は何も変わらない。
それなら、もう〝あわよくば〟なんて思わない。

ただ、自分の言いたいことを久我くんに全てぶつけるだけ。


「私……



久我くんのことは全っ然タイプじゃないから!」
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