狼社長の溺愛から逃げられません!
「あ、あれはべつに、努と別れたことが悲しかったんじゃなくて……!」
慌てて言うと、社長が首をかしげて私の顔をのぞきこんだ。
「じゃあ、なんであんなに泣いてたんだ?」
「それは、その……」
誤魔化そうとしても、この至近距離じゃ逃げることもできずに口をつぐむ。
私の肩と社長の体が触れてる。それだけでものすごく緊張してしまう。
近くからじっと見つめられて、ますます顔が赤くなった。
「なんだよ」
問い詰められ、もごもごと言いよどむ。
なんとか誤魔化そうと視線を泳がせていると、社長がじっとこちらを見た。
「なんで泣いた?」
耳元でもう一度問い詰められて、あぁもうこれは誤魔化せないなとあきらめた。
くしゃりと顔を歪ませて口を開く。
「社長が、私が傷つかないように気を使ってくれたのが嬉しくて……」
そう言うと、社長が背後ではっと息を吐いて笑った。
「そんなことで泣くなよ」
「だって、いつもは厳しい社長にあんな優しいこと言われたら、泣きますよ」
「ふーん」
あきれられるかなと思ったけれど、社長の視線は優しかった。