狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「違います違います! もう落ち込んでませんから」

背後に立つ社長を振り返りながら、慌てて首を横に振る。

「別れたときはさすがにちょっとショックでしたけど、今はもうすっきりしてます」

疑うような視線に、そう言って前を向く。

努に対して未練はもう一切ない。こうやってはっきり別れられてよかったと思う。
努との思い出の品は処分したけど、それは無理やり思いを断ち切って立ち直るためじゃなく、もう自分には必要ないと自然に思えたからだ。

なんだか照れくさくて、社長に背中を向けながら冷静なふりをして食器を洗う。

「ふーん。お前意外とたくましいよな」

すると社長がそう言って、私の立つキッチンのシンクのふちに手をついた。
まるで後ろから抱きしめられてるみたいで、ドキドキしてしまう。

「ど、どういう意味ですか?」
「あのときあんなに泣いてたから、もっと落ち込むかと思った」

そう言われ、試写会前に社長の胸に抱かれて大泣きしてしまったことを思い出して頬が熱くなる。


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