狼社長の溺愛から逃げられません!
すると社長がちいさく笑い、こちらに手をのばしてきた。私の頬にかかる髪をかきあげ顔の輪郭をなぞるように指でふれる。
そのとき鼻がむずむずして、思わず「くしゅんっ」とくしゃみをしてしまった。
恥ずかしくて口元を手で隠すと、目の前の社長の表情が険しくなった。
「……ていうかお前」
「はい?」
社長の低い声に、きょとんとしてまばたきをする。
突然怖い顔をして、どうしたんだろう。
「お前、なに濡れたままでのん気にコーヒー淹れてんだよ」
「え?」
「ずぶ濡れのままじゃねぇか! 人にお茶を入れる前に、自分の体を拭けよ」
容赦なく怒られて首をすくめる。
そういえば、雨に打たれてずぶ濡れだったことを思い出す。
「だ、だって。社長がうちに来てくれたのが嬉しくて、雨で濡れてるのなんて忘れてました!」
「バカか。さっさとシャワーでも浴びて着替えろ」
「でも」
せっかく社長がいるのに、待たせてシャワーを浴びるなんて申し訳ないし……。
そう思っていると、ため息をつかれた。