狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「俺はもう帰るから」
「え、帰っちゃうんですか?」

もう少し一緒にいたかったのに。

しょんぼりとうつむくと、ぐいとおでこを指でつかまれた。
前髪ごと掻き上げるように上をむかされ瞬きをすると、こつんと軽く額をぶつけられた。

視線をあげると、至近距離で社長が笑った。そして唇がふさがれる。

「しゃちょ……」
「唇まで冷たくなってる」

社長が一瞬だけ触れた唇を離して、あきれた口調でそう言った。
まつげがふれあいそうなほど近くで睨まれ、恥ずかしくて視線を落とす。

「社長……」

小さな声でつぶやくと、社長が私の顔をのぞきこんできた。
言葉の先を促すように見つめられ、恐る恐る口を開く。

「社長はどうして私にキスをするんですか……?」

勇気を振り絞った私の問いかけに、社長は肩を上げてちいさく笑った。

「どうしてだと思う?」

意地悪に聞き返され、上目遣いで社長の表情を伺いながら口を開く。

「やっぱり。禁煙するため、ですか?」
「バァカ」
「バカって……」
「お前本当に鈍感すぎる」

 
< 105 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop