狼社長の溺愛から逃げられません!
「有川さん」
「はい?」
名前を呼ばれ顔をあげると、古賀さんがこちらに手を伸ばす。なんだろうと思って首をかしげていると、頬に指が触れた。
「ほっぺたにソースついてるよ」
「あ、すいません!」
いい大人になって顔にソースをつけてるなんて恥ずかしい。
私が慌ててティッシュを探していると、古賀さんは笑いながらソースがついた指をなめた。
「なんか有川さんを見てると、実家で飼ってる犬を思い出す」
「犬ですか?」
「うん。クリーム色のミニチュアダックスなんだけど、黒目がちで目がうるうるしてて表情がコロコロ変わって可愛いんだ」
そう言って古賀さんが顔を緩める。
溶けてしまいそうな笑顔。古賀さんはよっぽど愛犬が好きなんだなと微笑ましくなる。
「へぇー。いいなぁ。ミニチュアダックス可愛いですよね」
「うん。すごく可愛いんだよ」
そう言いながらデスクに頬杖をついた古賀さんが、私の頭をなでる。
「毛の感じも似てるかも。柔らかくて艶があって」
「私は犬代わりですか?」
少しくせ毛のセミロングの髪をわしゃわしゃとなでられ、くすぐったくて首を横にふりながら苦笑した。
「ごめんね。しばらく愛犬に会えてないから、つい」
「いえいえ。可愛い愛犬に似てるって言われて光栄です」
そう言った私を古賀さんがじっと見る。