狼社長の溺愛から逃げられません!
ステージのそでからで観客席をそっと見守る。
緊張で、カーテンを掴む手に汗が滲んでいた。
招待したマスコミやお客さんにレナさんがイベントに来られないこと。かわりに社長が踊ることを説明したところ、残念がられるどころか大喜びだった。
特にマスコミは、映画業界で注目のイケメン社長が自らイベント登場は話題になると、情報を聞きつけたスポーツ紙の記者が増えるほど。
あらためて社長のすごさを思い知らされ、私は今にも逃げ出したくなるほど不安になる。
横に立つ社長が、そんな私を見下ろして小さく笑う。
「緊張してるのか」
「そりゃ、しますよ……」
泣きそうになりながらうなずく。
さっきから足が震えてる。心臓も今にも破裂してしまいそうなほど激しく鳴っていた。
気を緩めると、歯がガチガチと音をたてそうだ。
「なんで社長はそんなに冷静なんですか。社長はダンスできるんですか?」
「前の配給会社のアメリカの本社にもしばらくいたから、そのとき叩き込まれた。むこうの関係者のパーティーで、女優のご機嫌取りで散々エスコートさせられてたから慣れてる」
当然だというように涼しい顔でうなずく社長とは対象的に、私は不安でたまらなくて涙目だ。