狼社長の溺愛から逃げられません!
途中から私は、客席で見ているお客さんのことを忘れていた。
夢を見ているみたいだった。
社長の顔を見上げると、社長も優しい顔で私を見つめかえす。
社長が私のために踊ってくれてる。私のことを見つめてくれてる。嬉しくて嬉しくて、勝手に笑顔になってしまう。
へたくそなステップを踏みながら、社長にリードされてくるくると回る。
スミレ色のドレスのすそがふわりと膨らんで、おとぎ話の中のお姫様になったような気分だ。
社長とこうやって踊れることが嬉しくて泣きそうで、胸がいっぱいだった。
大きな歓声と拍手で我に返りはっとして辺りを見回せば、音楽はやんでいた。
はぁはぁと肩で息をしながら社長のことを見上げると、小さく笑い私の頭をなでる。
「頑張ったな」
その言葉で、ダンスが無事終わったことをようやく理解して膝から力が抜けた。
終わったんだ……。よかった……。
すとんとしゃがみ込みそうになった私を、社長が引き寄せ支えてくれる。
「大丈夫か?」
「すいません……。なんだか、頭が真っ白で……」
ぼうぜんとしながら言うと、社長がふきだすように笑った。