狼社長の溺愛から逃げられません!
誰だろう。雑誌のスタッフさんかな。それとも会場の?
はじめて見るその人に、首を傾げて小さく会釈をすると人懐っこい笑顔がかえってきた。
「きみってさ、黒瀬の恋人?」
唐突にそう言われ、慌てて首を横に振る。
「ち、ちがいます……!」
「そうなの? さっきのダンス見てたら、黒瀬と付き合ってるのかなぁって思った」
「えっと、社長のお知り合いですか?」
社長のことを呼び捨てにする人なんてめったにいない。
親しげに『黒瀬』と呼ぶ彼に恐る恐るたずねると、その人は「うん」と頷いた。
「昔からのね。今もちょこちょこ一緒に仕事してるし。きみ名前なんていうの?」
「あ、シネマボックスで宣伝の仕事をしています、有川美月です」
「美月ちゃんね」
「えっと……」
この人は一体だれなんだろう。
そう思っていると私の戸惑いを察したのか、にっこりと笑って頭を下げた。
「俺は映画監督やってます。如月です」
「如月監督……!」
聞き覚えのある名前に、思わず背筋を伸ばす。
ドキュメントとファンタジーの中間のような独特のアート系の映画を撮る、若手映画監督だ。