狼社長の溺愛から逃げられません!
「あいつ『お前の監督としての夢は、ここで終わる程度の夢なのか』って」
「どういう意味ですか?」
「『今ここで自分が撮りたいように自由に撮った映画を一本作って、それで満足していいのか』って。『今はある程度客が入って金を稼げるって制約の中で映画を撮って、着実に実績作って実力つけて、五年後十年後にもっとすごい映画を作りたいとは思わないのか』って」
聞きながら、まっすぐな社長の視線を思い出して胸が熱くなった。
「あいつ、『俺は、十年後のお前がどんな映画を撮るのか見てみたい』って真顔で言うんだよ」
「すごい……」
「むかつくでしょ」
「……かっこいいです」
「うん。むかつくくらいかっこいいよね」
しかめっつらでそう言う如月監督をながめながら、ふーっと息を吐いて両手で頬を覆う。
本当にあの人は、ずるいくらいかっこいい。
そう思っていると、ふっと目の前に影が落ちた。
なんだろう、と顔をあげると社長が私たちのことを見ていた。
「なんだ。ふたりで俺の悪口でも言い合ってるのか」
不機嫌そうに言われ、私は慌てて首を横に振る。
「いえ、そうじゃなくて……!」