狼社長の溺愛から逃げられません!
「す、すいません! 今見やすいように……」
慌ててノートを閉じようとした私から、社長がノートをひったくった。
涼し気な目元を伏せて私のノートを読む姿を緊張しながらみつめていると、不意に社長がふっと息を吐いた。
「お前、本当に百個考えたんだな」
そう言われ、驚いて首をかしげる。
「はい。社長にそう言われたので」
「俺は物の例えで百って言っただけで、まさかバカ真面目に百個考えてくるとは思わなかった」
きょとんとした私に、社長が楽しげに鼻で笑う。
その意地悪な表情に、私はあぜんとして口を開いた。
「冗談だったんですか? 私は必死に百個考えたのに……っ!」
顔色を変えた私に社長はうつむいてクスクスと肩を揺らすと、ちらりと視線だけを上げてこちらを見る。
端正な顔の社長に流し目で見られて、たったいま言いかけたはずの文句を忘れてしまう。
悔しくて口をつぐんで黙り込むと、社長はノートを閉じて私に返してくれた。
「ま。この中からなら使えそうなのがいくつかあるし、古賀とデザイナーと相談して宣伝の方向性を固めろ」
「……はい」
ノートを受け取り顔をしかめながらうなずくと、社長の手がこちらにのびてきた。