狼社長の溺愛から逃げられません!
なんだろう、と思っていると、その手がぽんと私の頭に触れた。
そしてわしゃわしゃと私の髪をなでる。
髪の間をもぐる長い指の感触に思わずドキドキして首をすくめると、こちらを見ていた社長が整った顔を緩め小さく笑った。
「頑張ったな」
優しいねぎらいの言葉に、目を見開く。
普段の冷血な態度とのギャップに、思わず胸がきゅんとする。
あの鬼社長が、こんな優しい言葉をかけてくれるなんて……!
そう思った途端、社長の表情が意地悪く変わる。
「昨日はコピーを考えるよりも、転んで崩した資料を元に戻すほうが大変だったんじゃないか?」
その言葉に、自分の耳を疑った。
「……はっ!?」
ぎょっとして目を見開くと、冷たく鼻で笑われた。
「ま、まさか社長、昨日見てたんですか……!?」
ひとりきりのオフィスで踊って、転んで資料に埋もれたこと。そんな自分がなんだか面白くなってひとりで笑っていたこと。そのあと必死に片付けをしていたこと。
全部見られてた!?
あんな情けなくてまぬけな姿を人に見られていたなんて!! しかもよりによってこの鬼社長に……!!
恥ずかしすぎて、涙目になって立ち尽くす。