狼社長の溺愛から逃げられません!
「有川!」
聞き慣れた声が私を呼ぶ。
この声は……!
ぱぁっと顔を輝かせて振り向くと、社長がちらりとこちらを見て顎をしゃくった。
それ以上なにも言わずに社長室へと入っていく。
なんの用だろう。
気になってすぐに走っていきたくなるけど、話しをしている最中だからもうちょっと我慢しなきゃと古賀さんに向き直る。
そわそわしながら古賀さんの言葉の続きを待っていると、古賀さんがため息をつきながら首を横に振った。
「ごめん。……やっぱりなんでもない」
「なんでもないんですか?」
きょとんとする私の横で、華絵さんがため息をつく。
「古賀って本当にヘタレだよね」
肩を落とした古賀さんの頭を、華絵さんが苦笑いしながらぽんぽんと叩く。
その様子に、やっぱりふたりは姉弟みたいに仲良しだなと思った。
「美月ちゃん、社長が呼んでるんでしょ。行っていいよ」
「はい」
華絵さんに言われて、早足で社長室へ向かう。
コツコツと二回ノックをして恐る恐る中を覗くと、不機嫌な顔をした社長がデスクで仕事をしていた。