狼社長の溺愛から逃げられません!
 

ちらりと視線だけを上げて、すぐに手元の資料を見る。
あ。なんだかすごく不機嫌そう。

「この資料が足りない。探しとけ」

視線も合わせず横柄な態度で雑用を命じられて、少し頬をふくらませる。
すると、その表情に気づいた社長が視線を上げた。

「不満か?」
「……いえ」

短く問われ、頬を膨らませたまま首を横に振る。

休憩時間に社長室に呼ばれて、ちょっとでも期待した私がバカでした。

お仕事だから、文句なんて言わずに頑張るけど。
なんて思っていると、社長がちいさく肩を上げて笑う。

「今日の予定は?」
「えっと、午後から新聞社にプレス資料を持って売り込みに行ってから、予告制作会社で打ち合わせをして、そのまま直帰する予定です」
「じゃあこれ」

ついでのように、ぽんとなにかを投げ渡された。
慌てて受け取り見てみると、ICタグが埋め込まれた重みのあるディンプルキー。

「俺も今日は早めに帰れるから、部屋で待ってろ」

素っ気なくそう言われ、嬉しくて一気に笑顔になる。

「……はいっ!」

勢いよく首を縦に振ると、その様子を見ていた社長が笑いをこらえるように肩を揺らした。


 
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