狼社長の溺愛から逃げられません!
 

このまま進めば一緒のエレベーターに乗ることになるわけで。狭い密室にふたりきりになるわけで……。

そこまで勝手に思考がめぐって、『ダメだ!』と本能が判断する。

社長と一緒のエレベーターに乗るのは、なんだかすごく危険な気がする。
ここは自然に忘れ物をオフィスに取りに行くふりをして、さりげなく危機を回避しよう。

そう決めてひとり頷いた途端、「なにやってんだよ」と声をかけられた。

「ひっ!」

驚いて跳び上がると、いつの間にか社長がこちらを見ていた。

「お前、考えてること顔に出すぎ」

涙目であせる私を見て、社長は笑いをこらえるように口元に手をやってうつむく。

黒い髪の間からのぞく端正な顔にシワがよって、無防備な表情が妙に色っぽく見えてドキドキする。

「べ、別になにも考えてませんでしたけど」

取り繕うようにそう言うと、「ふーん」と言いながらちらりとこちらを見て肩を上げる。

その顔はずるいと思う。なんでもお見通しって感じの、余裕にあふれた表情。
そんな顔で見つめられたら、私の考えてることなんて全部バレてるんじゃないかとドキドキしてしまう。

 
< 59 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop