狼社長の溺愛から逃げられません!
社長のシルバーの高級車。
その助手席に座り、私は緊張で凍りつく。
車体に輝く三叉の銛を模したトライデントの紋章。
日本ではあまりみない車種だけど、内装の重厚感からも革張りのシートの座り心地からも、ものすごく高級だということはわかる。
『電車で帰れるから大丈夫です』何度もそう言って断ろうとしたけど、まったく聞く耳をもたない社長に強引に押し切られ、結局私の自宅までの道を社長の車で送ってもらっている。
なんでこんなことになったのか、理解できない私はただただ戸惑っていた。
緊張しながら助手席の窓から外を眺める。
広告塔や街灯、車のヘッドライトなどの人人工的な明かりで浮かび上がる街が、残像のようにうしろに流れていく。
いつも電車で通勤しているから、車窓から見える景色がとまるで違ってなんだか不安になる。
この場違いな状況が心細くて、ぎゅっと両手で胸の前のシートベルトを握りしめていると、ハンドルを握る社長がちらりとこちらを見た。
その視線は少し不機嫌そうだ。