好きな人が現れても……
庶務課に異動したのは、妻の千恵が亡くなる前の年だ。

出産後の体調が不安定になりだし、少しでも長く一緒に居たいと思ったからだ。


それまでは販売促進部にいた。
親睦会で同じテーブルだった相川仁美とは、その頃共に働いてた仲だ。


久し振りですね…と声をかけられ、少しだけ一緒に飲んだ。
娘さんは?と訊ねてくるから、四歳になったよ…とだけ答えた。


相川は少し離れたテーブルに着いている横山と紺野のことを見つめ、そう言えば新人の頃の二人を連れて、よく一緒に外回りをしました…と言い始めた。


クールな横山とホットな紺野。
まるでボケツッコミのコンビみたいだったそうだ。


話に寄ると、クールな割に横山の方がボケてたらしい。
へぇ…と言うと、あんなだけど可愛い性格なんです…と笑った。




(可愛いか……。確かに可愛いよな)


あまりニコッともしないが顔立ちは整ってる方だ。
切れ長の目元が緩む瞬間を見つけると、こっちの気持ちもホッと和む。
もう一度笑わないかな…と、つい窺ってしまう時もある。



(……おっと、それ以上は止せ)


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