好きな人が現れても……
雑居ビルに入り、エレベーターで二階に着くと、自動ドアの向こう側では煙たい空気と話し声とが入り混ざってる。

受付のカウンターにいる男性店員が席札をくれ、その席に着くとすぐに別の店員が注文を受けに来た。



「俺は取り敢えず生中。横山は?」


「…梅酒で」


テーブルの上に置かれた梅酒の写真入りのポップを見て言った。
紺野君は少し驚いた様な顔つきだったけど、その場では何も言わずに他の料理をいくつかチョイスして頼んだ。


「大丈夫なのか?胃の中殆ど空っぽだろ」


昼食の量を知ってるから心配された。
平気よ…と言ったけど、セーブしながら飲もうと思ってた。


私の口が重いせいか、会話があまり進まない。
持ってこられた食前酒で乾杯をした後は、お通しのキューリと大根キムチを少し口に運んだ。

そのうち紺野君が頼んだ料理が届きだし、流石に少し食べたいかも…と箸を握る。
私が無言ながら食べ始めると彼も一安心したらしく、囁くように「良かった…」と呟いた。


「えっ?」


ししゃもを齧ったまま目を向けると、プハッと吹き出されてしまう。

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