渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~


「このハミール、人肌脱ごうじゃないか」


(なんだ、嫌な予感がする……)


ニッコリと笑ったハミールに、ガイアスは言い知れない不安を覚えた。

ハミールはというと、ガイアスの戸惑いにも気づかず、片膝を立てて、身の装飾の音を鳴らしながらその場に立ち上がる。


「何を企んでいる、ハミール」

「手洗いだ。そんなに心配するなら、着いてくるか?お前は男だが、綺麗な男ならば歓迎するぞ」


(……気色悪い男だな)

ハミールの冗談か本気かもわからない、感情の読めない笑顔に、ガイアスの肌にはゾワリと鳥肌が立った。


「今すぐ海に沈みたいようだな、ハミール。お前のためなら喜んで、俺はこの手を汚そう」

「ハハハッ、面白い冗談だ」

「本気だ!」


ガイアスは視線で人を殺せそうなほど、ハミールを睨みつけたが、本人には伝わっていないようだった。

笑いながら手洗い場へと向かって行くハミールを見送り、ガイアスはどっと疲労感に襲われる。


(あの男と話していると、魂を削ぎ落とされているみたいに、疲れる……)


「ガイアス様ぁ、お酒をお注ぎいたしますわ」

「果物はいかがでしょう?」

「肩をお揉みしましょうか、ガイアス様?」


ハミールが席を立つと、女達の目標がガイアス一人に集中した。

(こいうのが面倒だから、嫌なんだ)

媚びるような視線と、キツイ香水の匂いを漂わせる女達をチラリと見たガイアスは、また溜め息をついた。


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