渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「そういえば……」
バケツを手に、廊下を歩いていると、カルデアはイナダール国で使用人達と仕事をしていた頃の事を思い出した。
(城の使用人の一人が、嫌な事がある時こそ、掃除をすると、心が晴れやかになると言っていたわね)
「確かに、その通りかもしれないわ」
今、一人で部屋に篭っていたら、きっと嫌な事ばかりを考えてしまっていただろうと、カルデアは思った。
カルデアは中庭の端にある井戸に立つと、縄を引いて、水を組む。
そんな時だ、背後で土を踏む音が聞こえた。
「おや、これはカルデアじゃないか!」
「え……?」
振り向けば、そこには驚いた様子のハミールが立っている。
(ハミール様が、どうしてここに? 宴にいるはずでは……?)
「カルデアは宴に参加しないで、下働きをしているのか?」
井戸で水を組むカルデアを、ハミールは興味津々に見つめた。
(いけない、ガイアス様が私に下働きをさせていると勘違いしたら、ガイアス様の名に傷をつけてしまう)
カルデアは慌ててハミールに向き直り、首を横に振る。