渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「ルドルフ大臣」
「国王……陛下……」
ルドルフ大臣は他の奴隷船の看守達と共に、後ろ手に縄で縛られて、床に座り込んだままガイアスを見上げた。
ガイアスは視線で人を殺せそうな程に殺気を纏い、ルドルフ大臣を見下ろす。
「何故、カルデアを攫った。事と次第によっては、お前をこの場で斬り捨てる」
「っ……」
ガイアスの咆哮に近い叫び声に、ルドルフ大臣の体は小刻みに震えていた。
それでも、ルドルフ大臣は頑なに口を閉ざす。
遠目から様子を見守っていたカルデアは、ルドルフ大臣は全てを諦めてしまったかのではないかと思った。
(なぜ、国の為にした事だと言わないのからしら。やり方に問題はあったけれど、弁解してもいいはず……)
そこでカルデアは気づく。
ルドルフ大臣は、真に国を思うからこそ、自分の選択が招いた結果を受け入れているのだと。
「……語らぬのなら、お前は大臣ではなく、賊としてここで終わらせる」
ガイアスは剣を振り上げ、ルドルフ大臣は世界に別れを告げるかのようにその瞳を閉じた。
(あの人を、殺させてはいけない!)
カルデアは咄嗟に駆け出すと、剣を振り上げたガイアスの腕に抱きつく。