渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
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空が茜に染まり始めた頃、カルデアは髪を撫でられる感覚に導かれて、閉じていた瞼を持ち上げる。
「ん……んんっ……?」
「目が覚めたか、カルデア」
そこには、褐色の肌と髪を持つ、ガイアスの優しい顔があった。
優しく名前を呼ばれて、カルデアはまだ、夢の淵にいるような感覚に陥る。
「私……いつの間に……」
「窓辺にもたれて眠るなんて、体を痛めるぞ」
「ごめんなさい、海を見ていたので……」
ゆっくりと体を起こすと、ガイアスに言われた通り、体のあちこちが少し痛んだ。
(私、いつ間に眠っていたのかしら……?)
「また海を見ていたのか、船の時もそうだが、そんなに珍しいものなのか?」
「そうですね……」
この国で育ったガイアスならば、見慣れているのだろう。でも、カルデアにとっては、照りつける太陽の眩しさも、輝く青の海も、どれもが珍しい。
「年中雪が降り積もるアルナデールでは見られない褐色の大地、軽装な民、賑やかな露店。どれもが私には……宝箱のように思えるのです」
港から城までは、町中を歩いてきた。
町をじっくりと見たわけではないが、すれ違う民達の顔は、生き生きとしていて、私まで心踊ろうようだったのを、カルデアは今でも覚えている。