渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
城から少し馬を走らせると、ガイアスは前に座るカルデアの目を後ろから片手で塞いだ。
「俺がいいと言うまで、目を開けるな」
「は、はい……」
ガイアスは馬を止めると、目を閉じたま間のカルデアを抱き上げて馬上から下ろし、横抱きに抱えたまま、どこかへと歩き出す。
サクサクと草を踏むような音に、森にでも来たのかと、カルデアはドキドキしながら、想像を膨らませる。
「ガイアス様、私……歩けますよ?」
「視界が無いのに、危ないだろう。それに、俺がこうしたいのだ」
(こうして目を閉じていると、ガイアス様だけの体温を感じるわ……)
そっと頬を寄せれば、トクンッと脈打つ心臓の音まで聞こえてきそうで、カルデアは何故だか安心した。
暗闇の中、揺られていると、ガイアスが不意に足を止めた。
「よし、目を開けていいぞ」
「あ……はい……」
言われた通りに目を開く。
最初に瞳に映ったのは、燃えるような朱だった。
「っ……!」
見た事もないような朱い花の美しさに、カルデアは目をみるみる見開いて、息を呑む。
「この花はビスカと言って、年中猛暑の続くナディア国にしか咲かない花だ」
ここは、海沿いにある丘の上だった。
城よりも空を近く感じるこの場所は、ナディア国の町並みを隅々まで見渡す事が出来る高台だ。
そして丘には、まるで朱い海のようにビスカの花が咲き誇っており、潮風に吹かれて、時々波打つ。