渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「お前が、俺を意識しているようで安心した。離れていた間、カルデアが俺の求婚を忘れていたらと、不安になったのだ」
(求婚……まだ、ガイアス様は諦めていないのね。でも、私は一度、イナダール国に嫁いだ身。ガイアス様には、つり合わない……)
そういい聞かせながらも、カルデアはガイアスの手を振り払えずにいる。
その手に、唇に、触れられたい。
力強いその腕に抱きしめられたい、全てを奪って欲しいと、本能が望んでいる事に、カルデアは気づいた。
(マオラは、本能的に相手を望む事を、恋と呼んだわ。なら、今この胸にある想いも……恋なの?)
「っ……駄目よ、駄目……っ」
そう思って、カルデアはすぐに、その考えを否定する。
ガイアスを求める心を引き止めるのは、王女としての役目だった。
「お前は……俺には想像出来ない程の使命や、重圧を背負っているのだろうな」
「ガイアス様……」
ガイアスはカルデアを優しく引き寄せて、その背をあやす様に撫でた。
その温かさに、見て見ぬふりしていた胸の痛みを思い出して、強がりの仮面が壊れそうになる。
それでも泣かまいと、弱音を吐かまいと、自分の心を奮い立たせた。
「いつか、俺の民がヘルダルフに殺された時、お前がこうしてくれたのを覚えているか?」
「あっ……」
(あの塔で、ガイアス様を抱きしめた時の事、覚えていてくれたの……?)
カルデアはガイアスに抱きしめられながら、驚きに目を見開いた。
「覚えて……くださっていたの、ですか……?」
「当たり前だ、お前の温もりが、俺の心を癒してくれた時の事、忘れるはずがない」
ガイアスの言葉と腕は、カルデアの自制心をすぐに壊してしまう。
その瞳に収まりきらない涙が、雪のようにハラハラと流れ、落ちていった。