渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「私は……っ」
「勝手に俺の女に出すとは……ハミール、余程その命、要らないと見える」
(え……この声は……!)
突然聞こえた声に驚いていると、後から強い腕に抱き寄せられる。
フワッと太陽の香りが鼻をかすめ、カルデアの心臓は大きく跳ねた。
カルデアの言葉を遮った人物が誰なのか、確認しようと顔だけで振り返る。
そこには褐色の肌と髪を持つ、鋭い目付きをしたガイアスがいた。
「ガイアス様っ!?」
「よう、カルデア。悪いな、こうなるとわかっていたから、ハミールに会わせるつもりは無かったんだが……。部屋に行ったらお前の姿が無くてな」
「探させてしまって、すみません」
(たぶん、私とマオラが庭園を散歩していたせいね)
謝るカルデアに、ガイアスはフッと笑って頭を撫でてくれた。
それがまるで、気にするなと言ってくれているようで、カルデアの心は軽くなる。
「丁度いい、ガイアス。俺はカルデアが欲しいのだが、譲ってはくれないだろうか」
「断る!」
「即答だな……」
苦笑いのハミールに、ガイアスは無表情にツンッと顔を背けてしまう。
「金は積むぞ、そうだなぁ……我が国の絹織物を、一年分無償で贈ってやってもいい」
「なんですと!」
ハミールのとんでもない提案に答えたのは、ガイアスでもカルデアでもなく、その後ろに控えていた数人の大臣達だった。
「無償だなんて、正気か?」
「あの王女を引き渡すだけで、かなりの利益ですな」
「アルハジャールの絹織物……なんと魅力的なお誘いか!」
その場に、大臣達のどよめきが起こる。
……それもそうだ。
アルハジャールの絹織物は、その完成度の高さから、貴族達の間で人気なため、高値で取引される。
それを一年分となれば、かなりの額になるだろう。