となりの弱虫ヒーロー【短編】
「みさきは、なによりも大切な子だから」


どうして、そんなこと言うの。


ねぇ、なんで。


ギャル達は、こそこそと逃げるように去っていった。


何も言えなくて、なにもわからなくて、こんなにも律がわからなくなったのは初めてで、頭がこんがらがる。


でも、律が


「こ、怖かった……」


なんて、泣きながら笑うから。


なぜか安心して、私の知ってる律だって、よくわからない感情がこみ上げてきて。


「り、律のバカッ!」


涙がこぼれて、こぼれて止まらなくなってしまった。


「ご、ごめんみさき。
くるなって言われたって、みさきが殴られてるところを見て見ぬ振りなんてできなくて」


そんなこと、そんな笑顔で言うなバカ。


自分勝手すぎるよ、バカ。


「ずっと、謝りたかったんだ」


夕日が、律のまつげについた水滴をキラキラ光らせる。
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