となりの弱虫ヒーロー【短編】
「あの時、俺は無力だったから。
みさきを守るには、離れるしかないと思った。
どうしようもなくて、なのに、結局それでも守れなくて」


なんだよ、バカ。


全部私のためだって事くらい、知ってたよバカ。


いろいろ、言いたい事はあるのに、嗚咽しかもれない。


そんな私を見て


「やっと泣いてくれた」


優しく笑う律は、ちょっと、いや、だいぶズルい。


「いつだってみさきは、俺のことを守ってばかりで、ずっと我慢してた。
その事に気づいて、情けなくて、申し訳なくて、さ」


「ほんと、律は弱虫だもんね」


やっと涙が収まって、言い返す。


「いつも、いつもいつも泣いてばっかりで、女々しいし、どんくさいし。
なのにカッコいいし、モテるし、なんなのほんとに。
律がカッコいいせいで、一緒にいれなくなったじゃん。ほんとどうしてくれんの」


バカみたいに、ずっと我慢してた言葉が溢れ出す。


律は、驚いているのかなんなのか、ぽかんと口を開けて私を見ている。
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