(完)嘘で溢れた恋に涙する
「あ、着いた」


理玖の声にはっと顔を上げると、そこには今来た道に生えていた不気味な木は一本も生えておらず、綺麗な花が数え切れないくらい咲き誇っていた。


そして、私の視界いっぱいに広がるのは真っ赤な夕焼けだった。



綺麗…



そう口に出したかったけど、出すことはできない。


だけど、この綺麗な景色に見とれる私の間抜けな表情から気持ちを読み取ってくれたのか、理玖は笑いながら言った。


「綺麗だろ?」


私は頭が取れそうなくらいのスピードで何度も頭をふる。


「俺の大切な場所なんだ」


そう言いながら、理玖は足元の花を何本か摘み取る。



その行動の意図が読めず、ぼんやりと見つめていると、理玖はその花たちを一本の大きな木の下において瞼を閉じて手を合わせた。



ああ、そうか。



そんな理玖の姿を見て勝手に納得する。




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