透明人間の色
「___以上です」
どれだけ喋ったか知らないが、めちゃくちゃに長かった時間が終わった。
「ありがとう、紫」
あの人はそう紫を見ずに拍手する。つられて白々しい拍手が場に起こった。
僕はしなかったけど。
「では担当を決めていきましょう」
その言葉を合図に急過ぎるくらいに拍手を止めた一同に吐き気を覚えた。
でも、あの人は違うようで、能面のような顔にある口角を上げる。
「紫、お願い」
僕はその言葉にずっこけた。
会議なんて今まで出たことなかったけど、いつも紫が進行役をしているんだろうか?
周りを見渡しても、顔をしかめる者はいない。
どうやら定例化しているらしい。
「はい。では、そうですね。A-3、C-3、F-3の担当から決めたいのですが」
すると真っ先に手を上げたのは、ひょろっとしたおじさん。日本人というよりは、インド辺りの風貌をしている。
しかも、何だか頼りない印象さえ受けるその人。
僕はこの会議に間違って入り込んでしまったのではないかと思ってしまった。
だが、紫はそんなおじさんにとてもうん臭い笑顔を向ける。
「そうですね。クチナシさんお願いします」
“クチナシ”、か。
その名前は聞いたことがあった。
確か、この組織の中で一番のハッキング成績。つまるところ、彼はハッキングのプロだ。
多分、そこに“クチナシ”が配置されることは、想定してこの計画も作られている。
担当決めなんて、あってないようなもの。
確認でしかない。
敢えて言うなら、この場に今日集まったのは、これから先この場にいる全員が生き残る確証がないからだ。
今日が最後の会議になるかもしれない。
誰もがそう思っている。
この正義は、幸せな人にとって、絶対正当な正義なんかじゃないから。