熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「まあ……実際のところ、朝帰りからの同伴出勤を疑って噂するって言うよりね……。どっちかって言うと、綾乃ちゃんに対する羨望……というか、完全なる嫉妬だよね」

「え?」

「婚約解消した元許嫁に対しても、普通の顔してスマートにエスコートできるなんて。周りで見てた女子社員たちが、まるで王子様でも見るような目をしてたわ」


私の隣に並んでメイク直しを始める聡子さんの呟きに、私もほんのわずかに胸がドキッとするのを感じた。


「やっぱり育ちがいい男性って、全身から気品が溢れてるって言うか……身に染みついてるものだろうから、何をとっても洗練されてて美しいのよね」

「はは……」


私は短い苦笑だけ返してから、急いでメイク直しを再開する。


聡子さんの言う通り、『社長』として人前に出る時の優月は、仕草の一つひとつに気品が溢れていてとても優雅だ。
女子社員たちを虜にしたというスマートなエスコートを、自然に流れるような所作で繰り出す。
それができる彼は、まさに王子様そのものだろう。
された私も、お姫様になったような気分なのは間違いない。


だけど本当のところ、それに一番戸惑っているのは私だ。
優月のレディファーストもエスコートも、別に今日初めてされたわけじゃない。
私は許嫁だったんだし、成人してからは彼のパートナーとして、結構いろんなパーティーや祝賀会にも出席した。
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