熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
そういう場でのエスコートは、本人も意識してやってる分、今朝の比にならないくらいパーフェクトだ。
それは私にとって昔から当たり前に受けてきたものだし、正直、いちいちドキドキしたことはない。


だけど、今朝は確かに違った。
私の手を引いてくれるソフトな力も、さりげなく腰に回した手の置き方さえ、今までの妹のような許嫁に対するものとは、違うように思えた。
大事にされているという感覚は、もちろんいつもと変わらない。
けれど私は、そこにいつもと違うくすぐったさを感じて、胸が高鳴るのを抑えられなかった。


優月が意識して何かを変えたのか、それとも私だけの感覚かはわからない。
こういうのも、『恋人同士』になったからこそ、感じる変化なのかもしれない。


このまま未知の世界に迷い込んでいくような気がする。
今までと違って、周りも私も否応なく変化していくことに、私は尻込みしている。
それが今、偽りのない私の感覚だ。


「まったく……。綾乃ちゃん、なんであんなパーフェクトな男と、婚約解消したりしたの。もったいないったらないわよ」


まるで自分のことのようにボヤきながら、リップグロスを塗る聡子さんを横目に、私は苦笑を貼りつかせたままひょいっと肩を竦めた。
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