熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「綾乃が『恋人同士だから普通』って一般論に囚われて焦ってるうちは、そうとは言えないんじゃないかな」

「え?」


思いがけず否定されたことに驚いて、私は大きく目を見開いた。
優月は腕を解いて、『やれやれ』とでも言いたげに、私の頭を軽くポンと叩く。


「綾乃に一番意識して欲しいのは、俺の恋人になったことじゃなく、俺自身のこと。お互い今まで『許嫁』って関係に縛られてたけど、幸い今は何のしがらみもない。……それに綾乃、言ったろ? 好きだけど恋じゃないって」

「……うん」

「だったら、恋になる前から、俺を恋人だと思い込むな。それより先に、『好き』を恋にしてほしい」


そう言って私を見つめる優月の瞳が、どこか寂しげだったから、私はそっと目を伏せた。
それでも、彼が私に瞳を向けたままでいるのがわかる。


今日一日を省みる。
優月が何と言っても、私はいつもの彼にいつもと違うドキドキをもらった。


そんな自分に戸惑ったのは確か。
でも、私はただの一般論に囚われてたのかな。
優月を恋人だと思い込んで……。


だから、追いつけないって焦ったのかな。


「私……」

「俺も」


無意識に呟いた私を遮り、優月は続ける言葉を考えるように口を閉じた。
私は彼を促すつもりで、再び視線を上向かせる。
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