熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「……ほらね」


そう呟く私を見下ろしたまま、優月は困惑した表情を浮かべていた。


「優月はこんな状況でも、私に欲情しないでしょ?」

「……え?」


私が呟いた一言に、優月はフッと眉を寄せる。


「私はこういうのよくわからないけど、進藤さんが言ってた。極々一般的な性欲を持つ男なら、ベッドに女を押し倒したら、それだけで八割方その気になるもんだ、って」


私は優月の揺れる瞳をジッと下から見上げながら、フフッと笑い声を漏らした。
それを聞いた優月が、忌々しそうに舌打ちをする。


「その気って。アイツ何言ってんだ……。綾乃、進藤の言うことなんか鵜呑みにするな。俺はそんな性欲丸出しのケダモノじゃ……」

「でも、ドキドキもしないでしょ!? 今、優月、全然表情変わらないもの!!」


ぎゅっと握り締めた拳を胸に当てて言いのける私に、優月は「はあっ」と声に出して溜め息をついた。
腕に力を込めたのか、私の耳にベッドが軋む音が届いた。


「……逆に聞く。今お前、俺に組み敷かれてドキッともしないのか?」


探るような掠れた声が、私の鼓膜をくすぐる。
私はそっと優月から目を逸らして、一度だけ小さく頷いてみせた。
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