熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「今までも秘書には違いないでしょ?」

「あ……。婚約は、解消したんです」

「……What!?」


よほど驚いたのか、マリーさんの片言日本語が英語に変わり、ひっくり返った。
その声は周りのざわめきにのまれ、目立つほど響かなかったけれど、私は慌てて『しーっ』と唇の前で人差し指を立てる。
マリーさんはきょとんとしながらも、私の仕草に二度大きく頷いてくれた。


「だから……今は業務中だし、優月にエスコートされるわけにも……」


説明する言葉を考えながらそう伝えると、マリーさんは、『Uhm……』と日本語とも英語とも取れない相槌を返してきた。


「アヤノは、慎ましい日本人の中でも、特に群を抜いてるからね。奥ゆかしいって言葉、あってる?」


マリーさんは私に日本語を確かめてくるけれど、私イコール『奥ゆかしい』が正しいのか微妙なところ。
結局返事ができないまま曖昧に言葉を濁すと、マリーさんはフッと声を漏らして口角を上げた。


「まあいいわ。でも、なんで今頃、婚約解消なんてことになったの?」


『Why?』と首を傾げるマリーさんに、私はちょっと困って目線を逸らした。
なんて返事をしようと思っただけで、誤魔化したつもりはなかったけれど、マリーさんは私の返事を待たずに、きゅっと唇を引き締める。
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