熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「ま、理由なんかどうでもいいか。ってことはユヅキ、完全に『フリー』なのね、今」


私が無言のうちに一人で解釈を進めて、マリーさんは再び優月に視線を向けた。
真っすぐブレない瞳を、私は彼女の横から眺める。
その視線を受けた優月本人が、彼女に気付いてこちらに顔を向けた。


「……マリー」


彼の唇が、そう動いた。
それを見て、ちょうど会話の切れ目だったのか、オランダ商社の社長が優月の肩をポンと叩いた。
『またな』とでも言われたのか、優月もそれに短く返してから、私たちの方に歩いてくる。


「How have you been? ユヅキ」


マリーさんは最初から英語で優月に声をかけた。
彼に両腕を広げて、ハグの挨拶する。


優月はマリーさんの背に軽く手を回してすぐに身体を離すと、視線をわずかに宙に彷徨わせた。


「マリー、君のボスはどこ?」


日本語よりも英語が得意なマリーさんに、優月は英語で訊ねている。
彼女はそれを聞いて軽く首を捻り、顎の先で会場の奥を示して見せた。
マリーさんの仕草につられるように、優月がその方向に目を向ける。


「ねえ、ユヅキ。今アヤノから聞いたけど、婚約解消したんですって?」


マリーさんも、ちょっと早口な英語で質問を向ける。
『話したの?』というような視線を優月から感じて、私は無意識に肩を竦めて俯いた。
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