熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月は返事をせずに少し乱暴に自分の腕を引き抜くと、マリーさんと一緒に彼女のボスのいる方向に足を進める。
私もその少し後をついて歩きながら、視線はずっと自分のハイヒールの爪先に向けていた。


スタイル抜群の美人。
進藤さんに教えてもらった、今までの優月の『彼女』。
その中にマリーさんが含まれていても、何もおかしいことはない。


進藤さんから優月の女性遍歴を聞いても、私が心を乱すことはなかった。
許嫁の私とはできない恋を彼が他の女性としていたとしても、正直それが普通だろうと思っていた。
当たり前だから仕方がない。
確かにそんな風に納得したはずなのに、今、目の前で誘われる優月を見て、私は動揺している。


苦手だけど、私も顔見知りのマリーさん。
私が知っている女性の中にも、優月と関係を持った人がいたなんて……。


それがはっきりわかってしまうから、マリーさんの背中を見つめる私の胸の鼓動は煽られ、否応なく不快な速度で打ち鳴り始める。


進藤さんから聞いた時は、全然大丈夫だったのに。
聞き知っていた現実を、実際に目にしただけなのに、私の心はどうしてこんなに掻き乱されているんだろう。


今までに覚えのない感覚に、嫌な鼓動が治まらなかった。
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