熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
そう、優月がマリーさんの要求を全部受け入れたのは、私の為だ。
それはちゃんとわかってるのに、私は、優月が彼女を本邸に連れ帰るのが堪らなく嫌だった。
マリーさんを運ぶ為だと頭では理解してるのに、優月が彼女をお姫様抱っこするのを見ていて、胸が押し潰されそうだった。


「っ……」


結局、自分の思考に煽られて、堪えたつもりの涙が、またぶり返してしまう。
今度はツーッと頬に伝って、私は慌てて両手で顔を覆って隠した。


「ええっと……綾乃ちゃん」


泣き出した私の前に突っ立ったまま、進藤さんがちょっと困ったような声で、探るように呼びかけてくる。


「なんかよくわかんないんだけど……。要するに、パーティーで綾乃ちゃんがカッとして怪我させた女が、優月の家に泊まるってこと?」


私が言った言葉は、口を突くまま吐き出しただけで、要領を得ないものだったと思う。
なのに進藤さんは、簡潔に纏めてそう訊ねてきた。
私は涙で声を喉に詰まらせたまま、小さく頷き返す。


「で……その女ってのは、もしかして優月と付き合ってたことのある女?」


直球で探られて、胸がズキッと抉られるように痛んだ。


「ふ、ううっ……」


おかげで頷くこともできずに、私は涙交じりの呻くような返事しかできなかった。
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