熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「恋じゃなかったけど、私は優月のこと好きだし、そのまま結婚しても普通以上の幸せは保障されてました。でも、お飾りみたいな妻じゃ嫌。ちゃんと恋をして恋をしてもらって……そうやって結婚したい。そんな風に思った私に、優月は恋をしようって言ってくれた」


あの時、嬉しかったことを思い出す。
ドキドキした胸に、私はそっと手を置いた。


「私も、優月と恋がしたい。だから……私じゃ優月に相応しくないなんて、卑屈なこと考えて身を引きたくない」


今心にある感情を、包み隠さずに言葉にした。


「怪我をさせてしまい、申し訳ありません。でも、ヤキモチ妬かせてくれてありがとうございました」


私は一度しっかりと背筋を伸ばし、マリーさんの前で深々と頭を下げた。
返事がないから、彼女が私の謝辞をどう思っているのかわからない。


けれど、頭を上げる前に、プッと吹き出して笑う声が私の耳に届いた。
それに導かれるように、私はゆっくり頭を上げた。


「ヤキモチ妬かせてくれて、って。そんなお礼されたこと、初めてだわ」


私の前で、マリーさんは肩を揺すっておかしそうに笑っている。
パーティーの時からずっと見ていなかった、彼女が明るく笑った顔。
見慣れたその表情に心のどこかでホッとしながら、私は黙ったままマリーさんの次の言葉を待った。
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